山陰中央新報社 文化事業局ブログ2015年05月

縁を大切にした旅提案 「縁たび」

  • 日付:2015年05月27日 16:21
  • カテゴリー:出版
 5月10日付紙面で「縁たび」の書評が掲載されています。

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 大型書店をのぞくと、旅行コーナーにはカラフルなガイドブックがずらりと並んでいる。ところが、自分の旅にぴったりくるものを見つけようとすると、これが案外むずかしい。

 例えば出雲。これまで出雲を中心に紹介したガイドブックはほとんどなかった。松江中心で出雲は添え物。しかも出雲大社以外の記述はほんの少し。もうちょっと周辺に足を延ばしたいと思っても欲しい情報が載っていない。

 そんな時に出会ったのがこの本だった。この4月に発行されたばかり。「平成の大遷宮」や「典子様・国麿さんご婚礼」のころに出ていればもっと良かったのに。出すのが遅いぞ!と思いながらページをめくると、いやいや、そうではないのだ。

 地元在住のライター・編集者が作った。東京の出版社ならブームのピークを狙うところを、すこし落ち着いたころに、出雲の人が変わらず大切にしてきた「縁(えにし)」をキーワードに、地元目線で細かい情報を丁寧に拾い上げて出版された。

 いつも「神さん」が身近にいることを感じながら暮らしている出雲の人たちの心が伝わってくる、そんな出雲らしいガイドブックに仕上がっている。

 ページの中央を走るラフな線に「am」「pm」「lunchtime(ランチタイム)」などと手書き文字。なるほど、朝ホテルで目覚めてからの時間の流れに沿って、あそこを見たり、ここを訪ねたり、こんなものを食べたり…。そんな地元の人と一緒に散歩するように、ゆったりした出雲時間を歩くことを提案しているのだ。出雲を中心に、一畑電車から雲南・松江・米子・大田までという広がりも、数泊の旅にちょうどいい。地元の人にとっても新しい発見ができる情報が多い。

 島根県の調査によれば、遷宮や婚礼等の出雲大社ブームがもたらした経済波及効果は、NHKの大河ドラマの舞台になるよりもはるかに大きかったらしい。これからはこの本が提案するような、人とひと、人と土地の縁を大切にした、心がほっこり安らぐような「情緒波及効果」を出雲の旅がもたらしてくれることを望みたいものだ。

 (荒木左地男・旅行作家=松江市出身)